罹災から半年経過
放射能に対する温度差の話は、当地、福島県須賀川市にもあるんですよ。というか、あるのだ、ということを実感しました。7月8日、ある集まりに出席した際、須賀川市長のご母堂・須賀川市社会福祉協議会会長・須賀川市農協広報担当者・福島民報編集局文化部長を相手取り、食事会から深夜の二次会まで、オンステージで放射能とどう生きるかについて講演しまくってしまいました(笑)。みなさん、あきれていらっしゃったかもね。
というのも、ここ須賀川でさえ、社会の上の方にいらっしゃる方々が、いかに放射能問題を勉強していないか、いえ、そういう話を聞かないでいられるように努力していらっしゃるかがよくわかってしまったからなのです。それに気づき、愕然としたために、やおらスイッチが入ってしまったのでしょう(笑)。なんのためにスナックに行ったのやら。でも、これがきっかけになって、国や県が経済優先で命じてきたことを、弱者の立場優先に少しでも視線を移してくださるのなら、いくらでも話すし歌いますよ。
そうして、ここで目に見える景色のことを考えました。たぶん、被災から復旧するにあたって持っていた「現実の作業の中で感じていたリアルさ」が、一応の目処がついた後に、今度は対放射能戦に突入してしまったせいなのでしょう、「目に見える景色はまったく昨年と変わらないのに、実は毒だらけ」である非日常の中で、揺さぶられています。
知識や想像力を駆使しない限り、この町、この田畑、あの山、あの森の「どこがいけないのか」は絶対にわからないのです。絵に描いた餅、という言葉どおり、この餅は食えない(食ってはいけない)のですからね。対放射能戦を戦いながら、五感がすべて使えないという事実に、この身体がまるで潜水艦や宇宙船のように計器航行をしているような妙な感覚に陥っていきそうです(その感覚は決して第六感ではありません!)。もっとも、もし五感に感じるような放射能量の場所であったら、早晩、死にますが。
8月11日、社内のすべての復旧工事が終了。震災からちょうど5ヶ月かかりました。
6月に線量が高い土を掘ってドラム缶に詰め、穴を掘って埋めて、コンクリートで固めましたが、その次の除染場所として、屋根や壁やアスファルト舗装の部分を考えていました。そこで、8月19日、高圧洗浄機のデモをお願いしましたが、その担当者が「昨日まで南相馬市にいました」と言うので、「もしや児玉龍彦先生とご一緒でしたか」と聞いたら大当たり! 盛り上がって2時間くらい話し込み、児玉先生流儀の建物の除染方法をたっぷり教えていただきました。
8月29日、弊社でついに高圧洗浄機を導入しました。現役消防団員20数名で組織した弊社消防団メンバーを4人ずつのチームに分け、弊社平面図をブロック分けして、定期的に除染を繰り返していきます。以前に土をとった場所は、時間が経ってから計測すると、また高くなってくる傾向があるので、もう、業務の一環としてやり続けるしかないですね。
須賀川市の、除染活動の動きの鈍さにいらいらして、弊社では土をとって埋めたぞ、等々の情報や、田中優・小出裕章・広瀬隆・児玉龍彦各氏の講演画像をWEBから拾ってDVDに焼いたもの、またはっぴーあいらんど新聞などを、市長宅をはじめとして市の有力者である知人友人に送り続けてきましたが、ようやく少しその影響が出始めました。
8月29日付けで、市が「須賀川市放射性物質除染方針」を発表したからです。これを読むと、結構私が送った資料が効いたかも、という気になります(笑)。弊社のある岩瀬地区を優先して除染する、ということですから、弊社が行ってきたことのノウハウや、高圧洗浄機の使い方(まだ市は購入していませんから)等、伝えていこうと思っています。
私が市長宅等へ送り続けたDVDやWEBコピーや手紙の類は、まちがいなく彼らに「勉強してしまう」状態を作っているはずです。なので、県や党の指示が生産者でなく消費者・弱者寄りに切り替わったその時、市のリーダーたちは「何が問題だから何から手をつけてどこまで行けばよいか」を知っている人物として振る舞うことが可能になるでしょう。まあ、そのくらいの手助けだろうなあ。
何十冊もの放射能関連の書籍や山のようなweb情報を読み続けてきましたが、これなら「ウチのどんな社員でも最後まで読める」本がやっと見つかりましたので、9月8日、「須賀川市放射性物質除染方針」のプリントといっしょに全社員120名に配りました。
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