罹災から11ヶ月の対放射能戦の実際
疎開も移住も、本当に難しいことが、この地に居るとよくわかります。だから、しゃかりきになって勉強して、その成果を社員にも市中にもばらまいて。私が旗を振り続けていくことで、社員はPTA等で放射能を話題にしても、後ろ盾として社長がいるから、気後れすることなく発言できるでしょう。
取引先の社長さんたちに放射能の講義をしました。彼らは社員に私が作った資料をコピー。その社員さんから偶然聞いた話ですが、彼はそれをこんどは自分が住んでいる団地で配付したそうです。
市が動かなくても、市民の側からは動きが始まる。その何かの支えになれたらと思っていますが、弊社社員の住むある地域では除染についての住民集会が開かれたそうです。ところが、除染してもそのときに出た廃棄物の始末の方法がわからないということで暗礁にのりあげたとか。今は、誰も何もしていないのですから、除染しようとしまいと下水にはばんばん放射能に汚された水が流れ続けています。いずれ、下水処理場を含めて対策は必ずとられます。でも、今はそうではない。だから、同じことだから、遠慮するこたあない、まず自分たちの子どもを守るために、がんがんやるべし、私がその集会にでていたらそう言ってゴーをかけるよ、ってアドバイスしました。
弊社で高圧洗浄機を用いて定期的に除染を行っているメンバーは、地元消防団の団員です。市は、いずれ、市民に除染を手伝ってくれと言い出すはず。そのとき、その地域の消防団は真っ先に出動を要請されるでしょう。弊社社員は、すでに除染を行っているのですから、地元でもその知見を活かして、貢献できるでしょう。
10月以降は、社内の除染と、市長をはじめ市の有力者達に宛てて、ネットからの映像や映画をDVDに落としたものを中心に、本、ネットや雑誌のプリントアウト、社内除染の報告等を、十数回にわたって送り続けるのの、2通りを実行しています。
社内の除染は、6月と9月に土や泥や草木をドラム缶に詰めて穴を掘って埋めてコンクリートを流し込んだ後、建物と舗装された場所に対して高圧洗浄機2台を使用。具体的には24人の消防団員を6チームに分け、週に2回2時間ずつ、1回に2チームで、13のブロックに分けた箇所を順繰りに攻めています。
作業のたびに雨具・ゴーグル・手袋・マスク・長靴を新調しますのでそれなりに経費もかさみましたが、地域の空間線量が0.9マイクロシーベルト/毎時なところ、社内敷地では0.3に落とすことができています。今後も継続します。
また、上記物理的除染に加え、化学的除染にも挑戦し始めました。薬剤の選定にあたってはおよそ40はくだらないそれっぽいやつ(笑)を検討し、昔から使われていて人畜無害が証明されていて、かつ値段が高くないものを基準に選択し、二つに絞りました。
事務所等、屋内の空間線量を少しでも下げるために、ファインミセルを使います。これはもともと消臭剤として売られていたもので、特徴としては空間の浮遊ゴミを捕まえて地面に落とします。セシウムは細かい塵や埃に付着しているので、この手が有効です。ただし、床掃除が必須です(笑)。
使用方法は加湿器の水タンクに50倍に希釈して投入、それだけ。各部署で加湿器を使っていないところに計9台買い足して、都合20台近くが稼働中です。
舗装されていない敷地内の場所(砂利引きの駐車場、建物まわりの土・雑草のある部分、樹木、敷地外側の土手、隣接地の山林等、かなりあります)には、グリーンAを使用。これは、農薬が問題になったゴルフ場等で土壌改良のために使用されてきた実績が30年以上ある、光合成細菌です。
空間には使用できませんが、ある程度の水分のある土壌では微生物が働いて、(今の科学ではきちんと説明できないようですが)放射性物質を取り込んでその能力を消化して無力化します(笑)。効果は絶大(らしい)で、線量が90%近く下がるはず。劣化ウラン弾の処理に使えるとの広島国際学院大学大学院佐々木健教授の論文が発表されています。
撒布用に充電式10リットルタンクの農薬用撒布器を4台購入。消防団とは別に11人を選出し2チームに分け、週に1回1時間ずつ、一度に4名が、1時間で一人30リットル×4台を、細かくブロック分けした敷地内に撒いていきます。こちらは実験が終了、年明けから本格的に開始します。
他、内部被曝に関しては、市長宅に情報を流し続けたのが効いたのか(笑)、12月21日に、市長が記者会見を行い、4項目の対放射能対策(須賀川市震災復興計画について、原子力災害対策直轄室の設置について、学校給食用食材の放射性物質測定と基準値設定について、米の放射性物質の緊急調査について)を発表しました。特に学校給食に関する基準と対策は全国一厳しいものになりました。万歳。
正月に編成される市長直轄の原子力災害対策直轄室の設置については、果たしてどのくらいの覚悟と知識をもった人がその任にあたるのかが心配で、市役所の知人を通して、年明け早々、その方々5人まとめて面会をお願いしました。
国や県、あるいは民主党や自民党や各省庁の言う方策や基準値から思いきり逸脱した「こどもたちのための」行動になるので、なまじっかな覚悟では担当者はノイローゼになるでしょうから、味方は市内にいるぞ、と立候補する決意もさることながら、環境省や文部科学省が発表した公的な除染の知識くらいしか持っていないようなら、勉強も手伝おうかと思っています。もちろん、そういう申し出をしたことは、市長宅にも手紙を書いてしらせました(笑)。
内部被曝した身体を休めるためには、体内の放射性物質の排出と、免疫力の強化が必須です。プチ避難を行うと、累積で計算する放射線量が更に足されるのを少しでも防ぎますし、新たに入ってこないことで排出が進みます。一度薄い放射線を取り込んでいて、突然入ってこない期間があると、人によってはホルミシス効果が働いて、放射性物質に対する免疫ができる場合もあります。
免疫力を高めるには、完全なリラックスが一番。脳幹を休ませることによってそれを実現するバランスセラピーという療法が30年前くらいから開発されていて、実は家内はこの施術者の資格をとるため、震災後はずっと学費をはらってBTU(バランスセラピーUniv.)東京本校で勉強を続けているのです。具体的な施術はホメオストレッチと呼ばれ、荒れたコミュニケーションの回復にも驚異的な効力を発揮します。12月28日には東京本校の先生方に弊社へ来ていただき、全社員120名に体感してもらいました。また、年明け2月8日・9日には、東京本校の鈴木校長に来ていただき、課長以上役職者13名に一人1時間ずつ、ホメオストレッチをお願いしました。
などなど、いろいろ続いておりますが、そろそろ須賀川では被災者という言い方は終わりにできるかな。被曝者だけでも十分重いタイトルだから、一つ返上したいですね(笑)。
1月19日、下記のとおり、出かけてまいりました。当初1時間くらい、と言われていたのに、終わってみたら2時間(笑)。須賀川市原子力災害対策直轄室のみなさま、お忙しいところ、ありがとうございました。以下は、終わった後、思い出して書いてみた、当日私が話しまくった(笑)内容です。
記2012年1月19日(木)13:30-15:30 於須賀川市体育館2階会議室
須賀川市原子力災害対策直轄室 室次長
須賀川市原子力災害対策直轄室 主任
須賀川市商工労政課主幹兼課長補佐・商業振興係長株式会社福島明工社 代表取締役社長 川村龍俊
株式会社福島明工社 総務部部長
株式会社福島明工社 金型部部長(福島明工社消防団副団長)
株式会社福島明工社 生産部生産技術課課長(福島明工社消防団団長)須賀川市は、2011年12月21日、橋本克也市長の記者会見で、以下の4点を発表し、文書をインターネット上で公開した。
Ⅰ 須賀川市震災復興計画について
Ⅱ 原子力災害対策直轄室の設置について
Ⅲ 学校給食用食材の放射性物質測定と基準値設定について
Ⅳ 米の放射性物質の緊急調査についてⅠにおいて、復興都市像を「共有、共感、共生へ ともに築く復興都市すかがわ ~今こそ須賀川の力を.. 未来 そして こどもたちのために~」と位置付けた。
Ⅲにおいて、市の「教育委員会 学校教育課」が、学校給食の放射性物質含有基準値を世界一厳しい「測定器の検出限界値」に定め、食材は二日前に測定し、基準値を上まわる食材は使用しないことにした。
Ⅱにおいて、市の人事課が、市長直轄の原子力災害対策直轄室を設置することを決め、同室は各部課の上位にあって「指示」する立場にあることを組織図に書いた。
上記の大きなテーマは「数年後に子どもが放射線由来でがん等を発症する可能性を限りなく小さくするため、子どもの内部被曝を避ける努力を惜しまない」ことである。
学校給食用食材の検査は業者が行う。しかし、「教育委員会 学校教育課」の名において子どもに内部被曝をさせないためにこの検査を行うのであるならば、「教育委員会 学校教育課」は、それのみならず、あらゆる角度で、子どもに内部被曝をさせないように働きかけなければ論理矛盾がおきる。
12月21日までに校長を含む教職員がどのような指示または独自の考えにたって被曝について語り、行動していようと、その日以降、全教職員は、子ども・PTA・地域等々、関係するすべての人々に「子どもに内部被曝をさせない」ことをうったえなければならない。
当然、給食のみならず、家庭を含め子どもが口にするすべての飲食物は限りなくND(未検出)でなくてはならない。
子どもが呼吸によって吸い込まないよう、校庭での運動、水泳等の中止・禁止。
校内のみならず、通学路、家庭等の放射線量の測定。
線量の高い場所の調査。
線量を限りなくNDにするための除染。
上記すべてを教育し、守らせなくてはならない。その指示が「教育委員会 学校教育課」に出せるのは原子力災害対策直轄室である。
つまり、子どもの未来を見据える須賀川市は、内部被曝も外部被曝もNDを目指すと世界に向けて発信したことになる。
地産池消を奨励するために学校給食用食材を検査するのではなく、子どもが口にするすべての食材はNDであることを目指さなければならない。
須賀川市産の農産物は、基本的にすべて検査し、その値を販売時に明記すべきである。
NDやかなり低い田畑もあれば、かなり高い田畑もあるだろう。その両者に同様に配慮するのではなく、低い田畑のものはガンガン売り、高い田畑は補償を含めどのように線量を下げられるかを検討するべきである。
市はブロックごとに除染を行うよう国から指示されているが、実際には、低レベル放射性廃棄物となる、取り除いた土の一時保管場所が決められず、ほとんど行われていない。この解決方法は住民のコンセンサスをとることではなく、それではいつまで経ってもきまらないので、市の土地を充てるべきである。
遊休地が市にないのは当然なので、一時保管場所として公園をつぶすことを提案する。もちろん穴を掘って埋め、公園としては使用禁止とし、子どもの立ち入りも禁止すべきである。後で取り出して、いつかできるはずの最終処分場へ移動できるように、埋める際には容器に入れるべきである。
具体的には、先に容器をブロック単位で配付し、そこに入れて、約束した日までは人の立ち入らない場所へ置いておき、その日に市が回収して、公園等の市の土地へ移送し、埋設すればよい。
子どもの未来を見据える行動のすべては、当然大人の健康も守る。命や健康に関わる事態である以上、金は使うもので、今は借りてでも使うべきである。
以上
やはり、市役所内の人事異動であるからには、みなさんのお気持ちは市民へのサービスというジェントルなところにありました。平時に於いては、それはとてもすばらしいことだと思います。ですが、今は緊急事態。近未来の子どもを守るためには、行政は、リーダーシップを発揮しなければなりません。
がぜん、私の語気も態度も(笑)ヒートアップしまして、同席の弊社社員によれば、後半戦では聞いている方々の顔つきや目もとがキラキラしてきた、とか。本当だったらこんなに嬉しいことはないのですが。頼むよ、ほんと。
2月2日、福島明工社の社長になって、満5年となりました。いえ、何かお祝いしてくださいと言いたいのではありませんからご心配なく(笑)。
6年目になっても、まだまだ社長業は続きます。特に対放射能戦が始まってからは、会社の売上や利益は3番目。1番目は社員の健康、2番目は社員の生活と、緊急時モードに切り替えてこれまでやってきましたが、それでも、結果として、目標も昨対比もオーバーしております。おお、やはりちゃんとやればお金はついてくるなあ(笑)。
2月7日、須賀川市は須賀川市除染計画《第1版》をネット上に公開しました。
これを見ると、私がキーキー言ってきたことの、そうそう悪くないあたりにまとまっているので、ほっとしています。
続けて2月10日、岩瀬商工会の新年研修会(飲み会)において、ついに震災後初めて市長と膝を交えて話す機会を持てました。懇親会に先立って、市長が35分スピーチをしたその内容は、8割が対放射能戦、それも子どもの未来を守ろう、という宣言だったので、我が意を得たりとにこにこしてしまいました(←単純)。
スピーチの中で福島明工社の業務としての除染活動や私が資料を送った件についても触れてくださったので、飲み会ではいろんな社長さんが私のところへ話を聞きにきてくださいました(が、岩瀬地区の社長さんはほとんど60才以上の方々ばかりで、放射能に対する感覚が強烈に鈍く、興味は景気動向に限られていて、悪いお酒になりましたが)。
市長と二人で酒を酌み交わしたときに、市長からは、私が送り続けた資料はお母様・奥様がきちんと目を通し、自分にもとても役に立ったこと、また、1月19日の須賀川市原子力災害対策直轄室訪問の件はきちんとその部署から市長に報告があり、とても感謝していると伝えられたこと、等を先に話してくださいました。
二人して、子どもに内部被曝をさせないためにがんばろう的な盛り上がりを見せた結果、臨席の岩瀬支所長(2011年6月23日に私が文句を言った人達の一人)も「今になってみれば川村さんの言ったとおりになりました」と応援してくださるし、同席していた市議の方も自分にも資料を分けて欲しい、勉強したいから、と申し出てくださるし。
まあ、とにかく、私の対放射能戦は、年が明けて、一段くらいは階段を上ったようです。
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